+81.3.3222.5988

Japanese

WORLD OF IOT通信 2017 Vol.6 Repo.2 Connectivity

WORLD OF IOT
IoT通信技術と5Gのインパクト

国際技術ジャーナリスト 兼 セミコンポータル編集長
津田 建二

 

IoT(モノのインターネット)時代の通信技術として最近注目を集めてきたLPWA(低消費電力広域)は、LTEの次の第5世代モバイル通信技術としての5G時代にはどのようになってゆくのか。5Gは単に10Gbpsという高速のデータ速度だけではない。技術的にも産業的にもビジネス的にも大きく変わる。IoTと5Gとの関係を整理する。

 

IoTでは必ずしも高速性は要らない

IoT時代はもう始まっている。IoTはただインターネットにつなげるというモノではない(図1)。製造業はIoTで生産効率を上げることができるし、故障を前もって予知することもできる。それによって、20年間故障しないマシンを提供できることになるなら、ビジネスモデルを変えることさえできる。これまで製品を作り、顧客に納めて収入を得るという製造業のビジネスモデルから、製品を何時間使うごとにいくら、という従量制料金を決めることができるのである。

 

IoTシステム

図1 IoTシステムはIoT端末でデータを取り、クラウドやエッジなどでデータ収集・処理・管理・解析し、最後にIoTを使うユーザーに、得られた情報をフィードバックする

 

製造業がIoTビジネスを見る場合、その通信方式はどのようなデータを得たいのかによって変わるだろう。例えば、温度や湿度、圧力、力(加速度)、回転力(ジャイロ)、磁気などのセンサデータを連続して取るのか、あるいは消費電力削減のために30秒ごとに取るのか、あるいはCMOSイメージセンサを使って映像ストリーミングを流すのかによって、データ速度は全く違ってくる。静止時の温度や湿度なら遅くてもよいし、映像や音声のデータなら高速性やリアルタイム性が求められる。

IoT端末やモバイルデバイスをインターネットにつなげる場合、従来ならWi-Fiか携帯電話のセルラーネットワークを使ってクラウドへ接続してきた。いずれのネットワークも速度を競い合い、数十Mbpsというデータ速度で通信できるようにはなった。しかし、温度や力などのデータを30秒ごとに送るだけなら、数kbpsで十分、映像や音声データのようなMbpsという高速は必要ない。むしろオーバースペックとなり電力が無駄になる。だったら、IoTに向いた通信ネットワークを構築しようではないか。これがLPWA(Low Power Wide Area)通信である。

 

IoT端末から直接基地局へ

従来のワイヤレスセンサネットワークのように、メッシュネットワークだと数百個のIoT端末を構成でき、IoTにも向いているようだが、例えばZigBeeのようにセンサからセンサへデータを送り、最後にゲートウェイを通してインターネットに乗せる通信では、よく途切れた。このため、LPWAはIoT端末から基地局(実際はゲートウェイ)に低い消費電力で低速で、何度でも途中から送り直せる方式の通信にした。その到達距離は、低い消費電力で十数kmにも及ぶ。

低速・低消費電力・長距離というIoTの新しい通信方式だと、実は基地局でさえこれまでのような通信オペレータでなくても他産業やベンチャーなどの新規参入も可能になった。フランスのベンチャーSigfoxが参入できたのは、投資負担が軽いためだ。従来の携帯電話のセルラーネットワークだと半径2km以内の中心に基地局を設置し、細胞(セル)のように人口の多い地域から順番に網の目のように設置していく必要があった。例えば山手線内なら十数基設置しなければならない。投資負担は大きい。しかし、IoT専用通信だと半径十数kmを中心に一つの基地局でよいため、例えば山手線の内側に1基で済む。Sigfox以外のベンチャーも参入しているが、それらをまとめてLPWA業者という。

一方、セルラーネットワークは、これまで携帯電話の進歩と共にデータ速度を上げる方向でやってきた。アナログ方式の第1世代から始まり、第2世代でデジタル方式に代わり、第3世代になるとデータ速度が数百kbpsから数十Mbpsに高速になった。LTEの第4世代では最大1Gbps(実質的には数十Mbps~数百Mbps)とさらに高速になった。

 

5Gはデータ速度・遅延・消費電力も

5Gでは、最大10Gbpsと当初言われていたが、現在では最大下り20Gbps、上り10Gbpsとさらに高速になる。ところが5G通信は高速化だけではない。データが届く時間の遅れ、すなわちレイテンシが1ms以内、さらに消費電力を現在より1/10に、という要求までも盛り込まれている。こうなると、IoTが5G時代も必要な規格になることが明確になっている。しかも高速化・低レイテンシ・低消費電力化は全てANDではない。どれか一つでもLTEよりも優れていればよいようだ。また高速化でさえ、20Gbpsまで到達しなくても4Gの1Gbpsを超えれば、数Gbpsでも5Gと呼んでもよいようだ。規格は厳密だが、それを5Gと呼んでもかまわないのは、LTE時代からの文化ともいえる。かつて日本のNTTドコモはLTEを3.9Gと呼んだが、世界では4Gと呼ぶようになっている。規格は厳格に決められるが、時代と共に更新されていく。

では5G時代とはいつからなのか。国ごとに違うが、韓国は2018年の平昌オリンピックから商用化を始める計画であり、米国と中国も先行する。日本は2020年の東京オリンピックから商用化を始める計画だ。加えて、5Gはスタートしてお終いという訳ではない。常に進化していく。LTEと共存する規格もある。

NTTドコモやKDDI、ソフトバンクなどは競い合いながらも規格面や標準化で歩調を合わせながら、しかも各国の通信業者と話し合いながら進んでいく。NTTドコモには、3Gの時に味わったガラパゴス化を何としても避けたいという思いが強く、欧州・米国・中国・韓国を見ながら合わせていく。

 

5G規格にIoT専用規格も盛り込む

5G時代になってIoTの通信規格はお互いに無関係ではない。IoTの規格も5Gの規格に準じて変わっていく。その動きはすでに現在の4Gから始まっている。データ速度が数十kbpsと遅いNB-IoTと、1Mbps程度のCAT-M1という規格がそれだ。NB-IoTのNBはNarrow-Bandの略であり、周波数帯域が数十kHzと狭い。CAT-M1規格は移動時でも使えるようにするための規格で、周波数帯域はそれよりも少し広い。いずれも従来のLTEネットワークを利用して作られるIoT専用の規格である。

LTEだと帯域が10MHzや20MHzと広いためIoTのようにデータ速度が遅いデバイスでは無駄になると思われるかもしれないが、実は例えば20MHzの帯域の中にIoT信号も重ねて送れるようにする。例えばガードバンドを含めた帯域が100kHzのNB-IoT信号を20MHzのLTE信号に乗せるとすると、200個のIoT信号を一つの帯域の中に乗せることができるようになる。つまり200台のIoT端末の信号をLTE帯域に乗せることができるのだ。これも周波数の有効利用となる。

通信機器メーカーのEricsonによると、LTE基地局の通信装置のソフトウエアを変えるだけで、NB-IoT信号を含めることができるという。この場合では通常のLTE携帯電話だと電波は2kmしか飛ばないが、IoT電波は10km以上通信できるとしている(図2)。つまり新たに基地局を設置しなくても済むのである。両方式のメリットは大きく、LPWAは現在IoT専用ネットワークが有力だが、本命はNB-IoTやCAT-M1になるという見方も強い。

 

図2

図2 LTE通信基地局内にIoT専用基地局を含められる 同じ基地局でIoT専用通信も可能になる 出典:Ericsson

 

この方式、NB-IoTやCAT-M1方式のIoT専用通信はLTEから始まり、そのまま5Gへも展開できる点も魅力だ。5Gではレイテンシも短くなるためIoT通信のリアルタイム性が求められる応用にも展開できる。現在のLPWAはいずれこのセルラー方式に踏査されるという見方もあるが、例えば山間部や無人の地域で森林や自然を観察するためにはLPWAしかできないという応用もある。両方とも生き残る可能性は大いにありうる。

 

ミリ波の送信パワーにGaNも

5G通信は、半導体産業にも大きな影響を及ぼす。今のところ周波数帯は、3.6GHz帯、4.7GHz帯、28GHz帯が日本で使う予定になっているが、超高速となるともっと周波数を上げて帯域を広げたいところだが、周波数を上げれば上げるほど直進性が増していく。このため通信している人に応じて電波を向けていく、ビームフォーミングという方式が使われるだろう。この方式は、アレイアンテナを多数並べ、通信者の位置に合わせて位相を変えていくことで追従する。実験では60GHz帯のミリ波での超高速データレートのものもあるが、ミリ波はまだ実験段階にとどまっている。

ミリ波用のデバイスとなると特に問題なのはミリ波を送信するパワートランジスタである。従来のシリコンで難しければGaNやGaAsなどの化合物半導体を使う手があり、特にGaNは高周波で高出力が可能なため、有望視されている。GaNトランジスタはGHz帯ではないが、電源やモーター駆動のような高耐圧・大電流の用途では商用化されている。5Gの送信パワー回路は、GaNの今後の期待できる市場となりうる。GaAsはむしろ受信回路のフロントエンドの低雑音トランジスタとして使われる可能性がある。

基地局で使う送信機パワートランジスタとしてのGaNは、5Gではミリ波近くになれば、小さな範囲の基地局、すなわちスモールセルを多数設けることになり、GaNの市場は拡大する可能性は高い。しかも、GaNはSiCなどのハイパワーデバイスと比べ、コスト的に有利だ。Siウェーハ上にGaN層を形成するエピタキシャル技術を使えるためである。GaN製造のためのエピタキシャル装置や転位などの欠陥検査装置の開発、GaNの微細加工技術など、市場をにらんだ実用化に期待が膨らむ。

 

<SEMICON Japan 2017 / WORLD OF IOT>
2017年12月13日~15日 東京ビッグサイト
入場登録

<関連セミナー>
IoTコネクティビティフォーラム  (12月15日(金) 10:20~12:00)
セミナーのお申込み

 

Share page with AddThis