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WORLD OF IOT通信_2017_vol1_Repo.1 -SEMICON Japanは新技術と新事業の検証の場

 

  WORLD OF IOT/INNOVATION VILLAGE 2016 レポート
- WORLD OF IOTは新技術と新事業の検証の場 -

 

株式会社エンライト
伊藤 元昭

 

SEMICON Japan 2016の展示会場では、特別展「WORLD OF IOT」が開催された。会場の出展者からは、「他の展示会では会えない業界の人から、私たちの技術について意外な視点からの意見や要望を聞くことができます」という声が聞かれた。3年目を迎え、IoTに関連したビジネスを考える人たちが情報交換する場として、また新しいビジネスを共に作り上げるパートナー企業を探す場として、広く認知されている様子が見て取れた。

今回のWORLD OF IOTでは、トヨタ自動車や富士通、ソニー、さらにはパナソニックなど、IoTの応用製品を扱うメーカーやそのグループ企業が、独自開発のデバイスを出品。さらに、IoTの利用シーンを拡大する新技術として、フレキシブル基板の上にハイブリッド部品を実装する技術、フレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクス(FHE)に関する展示コーナーが設けられた。

WORLD OF IOTの会場内と展示と出展者の声を、斬新なアイデアや技術を持つスタートアップ企業のアピールの場である「INNOVATION VILLAGE」の様子と合わせてレポートする。

 

IoTの応用機器メーカーがデバイスを独自開発

初回から出展し続けているトヨタ自動車は、今回は2カ所に分けて出展した。一つは、SiCパワー半導体を開発している広瀬工場がデバイスメーカーとして出展し、ハイブリッド車などのモーターを制御する車載PCU(Power Control Unit)に搭載するSiCパワー半導体の開発状況を披露した。2016年12月1日、同社は社長直轄の組織である「EV事業企画室」を設置し、いよいよ電気自動車の事業に本腰を入れ始めた。SiCパワー半導体の開発は、こうした動きの中で一層重要性を増している。同社ブースの担当者は、「半導体産業の方々から何らかの知見をいただけるよう、必死に話を聞いています」と語っていた。

もうひとつの展示は、燃料電池自動車「MIRAI」(図1)に関するIOTサービス。同社のテレマティクスサービス「T-Connect」を通じて、最寄りの水素ステーション情報をドライバーに知らせるシステムである。営業状況やステーションの満空情報をリアルタイムで更新し、目的地に設定できる。また、専用スマホアプリで離れた場所でも車の水素充填量を確認できるという。

写真:MIRAI図1 トヨタ自動車が展示した燃料電池自動車「MIRAI」

三重富士通セミコンダクターは、同社が提供する様々なファウンドリ・サービスを紹介した。同社は、旧富士通セミコンダクターの300mmウエハー対応工場を引き継いだ、90nm〜40nmプロセスで月産3万5000枚の生産能力を持つ日本最大級のロジックファウンドリである。車載品質の半導体も提供できる生産・品質管理体制も整えている。さらに「工場やラインには、地震など災害が発生しても操業がストップしない様々な工夫が盛り込まれています」(同社ブースの担当者)と言う。会場では、将来技術であるカーボンナノチューブ(CNT)を用いた不揮発性メモリー「NRAM」を混載したLSIの開発状況も披露した。

ソニーセミコンダクタソリューションズは、新たな機能を付加した2つのイメージセンサーを提案していた。1つは、物体までの距離を測ることができるイメージセンサー、測距TOFセンサーである。空間認識、形状スキャン、オブジェクトトラッキング、AR/VRなどへの応用が既に始まっている。同社は、モジュール基板部分の面積が約11mm×14.6mmの世界最小ToFカメラモジュール「DS541」を展示した(図2)。もう1つは、各画素に波長透過特性を自由に設計できるマルチカラーフィルタを配したマルチスペクトルイメージセンサーである。複数の分光画像を同時に取得可能で、農業、医療、食品、工業など応用に応じてフィルタ特性を自由に設計できる。

写真:DS541図2  ソニーセミコンダクタソリューションズが展示した 世界最小ToFカメラモジュール「DS541」

開発中の技術、目指す事業をSEMICON会場で検証

SEMICON Japan初出展となる村田製作所は、半導体工場などに設置できる環境監視用無線センサーネットワーク用の無線センサーモジュールを展示した。温湿度、人感、照度などを配線なしで監視できるものだ。この中で、現時点では製品化していないガス濃度センサーも展示していた(図3)。様々なセンサーを市場投入している同社だが、実はガスセンサーはこれまで扱っていなかった。今回の展示では、ガスセンサーのデバイス自体は外部調達してモジュールを作成している。ただし、既にガスセンサーの独自開発にも着手しているのだという。今回の展示では、「工場などでのどのようなニーズがあるのかSEMICON Japanの会場で声を拾い、ガスセンサーやモジュールの研究開発に生かしていく予定です」(同社ブースの担当者)と語っていた。

アナログ・デバイセズ(ADI)は、Consumer Physics社が開発した世界初のハンドヘルド式、分子センシング技術「SCiO」を展示(図4)。食品などにセンサーを当てることで、近赤外線分光法を使って、チーズやトマトなどのカロリーや脂質、糖分、タンパク質など含有成分を計測するデモを披露した。食品以外にも、燃料や石油に含有される化学成分の分析、計測など多様な用途に利用できるとする。実は今回展示したハンドヘルド型のSCiOにはADI製の製品が搭載されていない。Consumer Physics社とは、IoTプラットフォームを共同開発する協業関係にある。SCiOはかなり汎用性の高い分析器だが、ADIの製品を搭載し尖った性能を持つ同コンセプトの超小型モジュールや搭載スマートフォンも近く発売予定という。新しい価値を持った機器を、共に開発していくパートナーをSEMICON Japanの会場で探す狙いがあったようだ。

写真:ワイヤレス・ガスセンサー・モジュール図3  村田製作所が展示した ワイヤレス・ガスセンサー・モジュール

写真:SCiO図4  ADIが展示した ハンドヘルド式、分子センシング技術「SCiO」

繊維業界、写真業界からも出展

FHEエリアでは、これまでの半導体業界とは縁遠かった業界からの出展者が数多く見られた。

東洋紡は、やわらかい導電性材料を使ったウエアラブル向けの技術「COCOMI」を展示した(図5)。COCOMIは厚さ約0.3mmの導電銀ペーストベースのシートである。表面抵抗1Ω□未満と導電性が高いため、少ないノイズで生体情報を取得できる。さらに伸縮性に優れ、耐水性もあり、装着感のよいデータ収集機能を持った服も実現できる。スポーツやヘルスケアの分野での心電図、筋電図、発汗量の記録などへの応用を想定しているが、「SEMICON Japanの来場者は、私たちが思ってもみなかった用途での利用の可能性を示唆してくれるためとても参考になります」(同社ブースの担当者)と話していた。

日本写真印刷は、大面積荷重分布センサーや非接触の生体センサーを展示した。大面積荷重分布センサーは、タッチセンサー技術を応用して、歩行中の足の裏の荷重分布をセンシングし歩行の特徴を瞬時に解析できるものだ。センサーを人に取り付けるのではなく、大面積のセンサー上を歩いて測るため普段の歩行状態を計測できる。一方、非接触生体センサーは、イスの背もたれの部分にフレキシブルセンサーを設置し、寄り掛かるだけで心拍数、筋電図や脳波など生体情報を計測できるようにするものである。被験者が意識することなく、長時間の計測が容易になる。「生体情報の扱いに詳しいパートナーを探し、応用を広げていきたいと考えています」(同社ブースの担当者)と言う。

写真:「COCOMI」を活用した違和感なく生体情報を収集できる服図5「COCOMI」を活用した違和感なく生体情報を収集できる服

 

IoT固有のニーズに応えるデバイスを開発

スタートアップとのビジネスマッチングの場であるINNOVATION VILLAGEでは、31社がパネル展示にデモを交えて、独創的な発想に基づく技術を熱心にアピールしていた。会期2日目の12月15日には各社が5分間プレゼンテーションする「INNOVATION VILLAGEピッチ」も開催され、多くの聴衆が各社のアイデアの数々に耳を傾けていた。

イヌパシーは、犬の気持ちが分かるセンサー「INUPATHY」を展示した(図6)。犬の気持ちは、胸部に取り付けている心拍センサーで取得したデータを解析して判定する。「ドキドキ/リラックス」「集中」などの状態変化に応じて、LEDの明滅パターンが変化する。会場では、実際にコーギーにINUPATHYを装着し、実演してみせた。

SEtechは、データ収集の時点で必要以上の情報を取得しないことによってプライバシーを保護する、斬新なコンセプトのカメラを展示した(図7)。IoTでは、イメージセンサーで取得した画像データと画像認識を組み合わせたデータ収集の活用に期待が集まっている。その一方で、日常生活の様子を画像で撮られることによるプライバシーの侵害や取得した膨大な容量のデータを持て余すといった課題を抱えている。SEtechが提案する技術は、注目する場所での注目する動きがあったときだけデータを取得するものだ。介護現場の見守りや、動きの少ない場所での省エネ監視を想定している。

クァンタリオンは、原子核の自然崩壊で放出されるα粒子を捕捉して、それによってランダムに発生するパルスの間隔から真正乱数を生成するデバイスを開発した(図8)。IoTでは、高度なセキュリティーを、低コストかつ少ないリソースで実現する必要がある。そして、強力な暗号などを生み出すための乱数を、手軽かつ堅牢に作る技術が欠かせない。同社の技術は、完全にランダムに発生する自然現象を利用しているため、生成した乱数を活用した暗号を破ることはできない。既に5.0mm×5.0mm×1.4mmのランダムパルス発生器をサンプル提供しており、ワンタイムパスワード、ICカードなどに搭載できる2.0mm×2.0mm×0.2mmへの小型化にもメドをつけているという。また、NEDOの助成事業によって、ワンチップ認証素子を開発中であり、2017年中に出荷予定である。

パリティ・イノベーションズは、モノの上に置くだけで、あたかも空中に浮かび上がって見える光学素子「2面コーナーリフレクタアレイ(DCRA)」を展示した。DCRAによる空中映像は、映像が視察される距離や方向にかかわらず、空中の一定の位置に見える。DCRAは、1000分の1mmの精度で作られた0.1〜0.5mmの光学素子をアレイ状に並べた構造を採っている。「半導体業界は微細加工技術に豊富な実績を持っています。SEMICON Japanでナノオーダーでの加工が可能なパートナーを得られればと考えています」と語っていた。

写真:INUPATHY図6 犬の気持ちが分かるセンサー「INUPATHY」

写真:イメージセンサー図7  SEtechが開発した“注目する場所で、注目するタイミングで情報を取り込む省エネカメラ”

写真:MIRAI図8  クァンタリオンが開発した小型の乱数パルス発生器

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